先日今更ながらにジョブズ氏の自伝本の一巻を読んだわけですけど、その中で記憶に残ってることの一つに、ジョブズ氏がスカリー氏と仲良かった最初の頃で、他の時代に産まれたら自分は詩人になってたと思う、という言葉があります。
昨年ジョブズ氏の1995年の失われたインタビューもiTunesで購入して見たんですけど、その中でも、最後に、だから人は銀行員じゃなく詩人になりたいとか思うんだ、みたいな発言あったことを覚えてたんで、余計に引っかかってました。
そして、ジョブズ氏の実の妹が作家だったという話も、ジョブズ氏が詩人になってたと思うという話とリンクするとこあるなぁ、血筋って凄いなぁ、とかも思ってたんですけど、今日改めて気づいたのは、ジョブズ氏の詩人になってたと思うという自己認識は彼の大業を大きく支えてたなということですね。
1995年の失われたインタビューを見た時に、彼の発言の切り口の角度の凄さや切れ味の鋭さみたいなのを垣間みて、超有能で有名なティムクックをして、ジョブズ氏との面接の時に天才の下で働けるチャンスだと直感させて、理論的な彼に周囲の反対を押し切って理屈より直感に従わせたくらいの凄さを思い出したりもしてたんですけど、そうやって限られた時間に限られた言葉で多くを強く感じさせる、というのはまさに詩人の才能だなと。
もっと誰もが見れる分かりやすい例でいえば、ジョブズ氏のプレゼンもとても評価高くて彼にしかできない真似できないものとされてますけど、それも、彼の詩人としての言葉の魔術の才能のなせる技だったろうなと思いますね。ジョブズ氏時代は、彼がプレゼンのほとんどを行っていたから、時間にすると詩という印象より余程長いんですけど、一つ一つの言葉を大衆の心揺さぶりながら印象付けてたのはまさに彼の詩人としての才能だったんだろうなと。
あと、有名な話でもある彼の現実歪曲フィールドは、その良い面としては、普通に考えると不可能なことでもジョブズ氏が言うと可能に思えきて、実際に可能に出来た、という効用あったそうですけど、それも詩人的な言葉の魔術師、の力だったんだろうなと。Macintoshの出荷の時に、出荷日の未明になってもソフトの不具合あって諦めようとしてたチームにジョブズ氏が喝を入れたら、チームのメンバーも不思議と出来る気になって、実際になんとか出荷できたなんていう話もあります。
それと、先日も書いた、多くの人が驚いたであろう音楽業界にデジタル配信させたりする彼の交渉力は有名ですし、最初の頃のスカリー氏をはじめ、彼と会話した人は皆彼を頭が良いとか天才とか思うというのも、彼の詩人的な、短い言葉で多くを思わせる言葉の魔術、みたいなものが発揮されてたのではと思いますね。
そんな詩人な彼に、逆にダメという評価をされたのが、アメリオ氏で、30分話せば彼が有能でないことは分かる、みたいな彼の発言も自伝本にはありますね。
ジョブズ 詩人 で検索してもこういう話は無かったんですけど、彼は世界を変えるとか、良くするとか、人類を前進させるような、クリエイターのための道具としてのMacという存在をとても重視していて、彼がAppleに復活した時のThink Differntキャンペーンも有名ですけど、その彼も、ビジネス的なクリエイトの面は当然に分かりやすく評価されてますけど、それを支えていたのは詩人としての生粋のクリエイターの才能だったんではないかなと改めて感じますね。人類の未来を志向しながら、適確にキレキレに、それでいて人の心を揺さぶり動かすくらいに表現できるような詩人的な才能が革新的な会社の経営者としての素質と巧くマッチしたんだろうなと。